『見立てと想像力 ━ 千利休とマルセ ル・デュシャンへのオマージュ』展
今年2017年は、フランス人アーティストのマルセル・デュシャンがレディメイド作品「泉」を発表してから100年目に当たります。デュシャンは、既製品の男性用小便器にこのタイトルを付け、公募展に偽名を使って応募し、意図的にスキャンダルを引き起こしました。この結果、アートの概念は根底から覆され、現代アートが誕生。既製品に意味やメッセージを与えて作品とする「レディメイド」は、多くの作家が採用する手法となりました。
「泉」の約350年前に同様の発想を抱いたのが、茶の湯を完成させた千利休。魚籠や瓢箪を花入れとしたり、釣瓶を水指としたりする「見立て」の手法はレディメイドとよく似ています。様々な趣向を取り入れた茶席の「しつらい」は、今日のインスタレーションの先駆けとも捉えられます。
デュシャンは伝統的な絵画を「網膜にとどまっている」と言って批判し、作品は目だけを喜ばせるのではなく、知性や想像力に訴えかけるべきだと主張しました。一方、利休には有名な「朝顔の茶会」の逸話があります。利休邸に咲き誇っている朝顔の評判を聞きつけた豊臣秀吉が屋敷を訪ねると、庭にはまったく花が見当たらず、茶室にただ一輪の朝顔が生けられている。他の花はすべて利休が摘み取らせてしまっていたのです。また、ある茶会では花入れに水だけを入れ、花を生けずに客人に見せました。花はあなた方の頭の中にある、想像してご覧なさい、というわけでしょう。
あるものを別のものに見立て、観る者の想像力に訴えかけるという点で共通していた利休とデュシャン。「茶の湯の父」と「現代アートの父」の思いに倣い、先ごろ150年近い歴史を閉じた小学校を舞台に、日仏のアーティスト8名が、想像力を刺激するインスタレーションを展示します。
参加アーティスト:藤本由紀夫、セシル・アンドリュ、宮永愛子、八木良太、染谷聡、ジュスティーヌ・エマール(サウンドデザイン:原摩利彦)、井村一登、小松千倫
企画:小崎哲哉
ニュイ ・ブランシュ 2017『見立てと想像力 ━ 千利休とマルセ ル・デュシャンへのオマージュ』展
10月6日–10月22日(12:00–19:00)※10月6日は22:00まで
会場:元淳風小学校
京都市下京区大宮通花屋町上ル柿本 609-1
トークイベント(入場無料 事前予約不要 先着30名):
10月7日 15:00–16:30 藤本由紀夫×セシル・アンドリュ
10月15日 15:00–16:30 宮永愛子×八木良太
10月22日 15:00–16:30 朝吹真理子(小説家)
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